photo by Albert Yau ”moog audio”
前回までの省略あらすじ
あんまりAudioにハマると音楽を楽しむという当初の目的を忘れ音質の向上と再現性にだけ走ってしまいAudioを聴く時はまるで神社の儀式かお参りか、といったことになってしまうのです...
音質に関しては時間をかけて予算内でベストなクオリティーのモノを自分の耳で選んだあとは音を楽しまなくては「音楽」ではなくなります...その意味でも「121」はその時点でわたくしにぴったりのスピーカーに思えました。
しかし、あくまでその時点で...この直後にAudioの儀式チックな世界になぜ多くの方々がハマってしまうのか、その理由を自身で体験する出来事が待っているのです...
初めてiTunesを -私的Macオーディオ化計画その5-より
この記事の続きを書くのは9年と8ヶ月ぶりとなる。
「初めてiTunesを -私的Macオーディオ化計画その5-」の続きを書こうとしているのだが、この内容にあたる時期から既に約11年の時間が経過している事から記憶が曖昧になっている部分もある。その点は何卒ご了承頂きたい。
9年8ヶ月前の前回の締めくくりは「この直後にAudioの儀式チックな世界になぜ多くの方々がハマってしまうのか、その理由を自身で体験する出来事が待っている」となっている。では、一体何があったのか??
この出来事はBose121を視聴した直後に起った事だ。話の舞台となる場所は京都にある四条寺町を下がった電気街(因に現在では多くの電気店が店を閉じ、電気街と呼べる様な様子では無い)。
2015年現在から遡る事、約12年前。当時、T字路(本来の言い方は丁[てい]字路)の角地にあたる、この場所には”とあるお店”があった。その頃、既に寺町の電気街(通称”寺町通り”)はヒエン堂、中川無線、ニノミヤ無線などが次々に閉店する状況だった。
その様な状況を踏まえると、その場所にいつの間にか出来ていた(それまでの電気街には無かった業態の)”とあるお店”は当時の寺町通りの変化を象徴するお店の一つと現せるものだった。
当時(2015年から遡る事12年前)、以前からそのお店の存在は認知していたのだが、ふとした時に大きなガラス窓から伺える店内に如何にも高級そうなオーディオが設置されている事に気が付いた。
いつの間にか設置されていた大袈裟なオーディオ機器を見て、当初は「店の人の趣味か?店内に音楽を流すだけにしては豪勢だな」と思っていた。
だが、よくよく見てみるとどうやら、それらは販売されている様子だった。因にそのお店の業態からは、それらのオーディオ機器が販売されているとは直ぐには気が付けなかった。
時々前を通る度、目にしていると興味が湧いて来た。しかし、そのお店はとにかく入り辛い雰囲気だったのを今でもよく覚えている。変な事を言う様だが、何故かそこに入ると食われてしまう様な感覚がしたからだ。
そんな様子だったから当時も興味はあっても入らないまま時間が過ぎていた。しかし、その後に意志を持った人間は、その様な怖々とした感覚も好奇心や興味の前では横に置いて行動に移すものだ、と実感することになる。
そうして行動してみると「勇気」とは実行した後、過去として観測されるものだ、と気が付く事になる。実行する以前に「勇気」は存在しない。ただ当人が「やったあと」で行動した時の、あの感覚が「勇気」と呼べるものだったのかもしれない、と気が付く。
そして、あの時の自分は勇気を必要としてもいなかったし、持ってもいなかった。ただ単にお店に一歩踏み入れただけだった。
話は戻って。お店の前で怖い感覚を感じた時点から一年近くの時間が経った後(今から約11年前)、Bose121を視聴した今は亡きタニヤマムセン(この後エディオングループ入りしミドリ電化となり現在エディオンへ名称変更、ヒエン堂亡き後、当時唯一残った寺町のオーディオコーナーは一度消えるも、現在は小規模に復活している。担当者曰くヨドバシに無いものを置くと売れるらしい)を後にして、例のお店へ躊躇無く足を踏み入れた。
以前にはあんな感覚を感じていたのに何故足を踏み入れたのか?特に深い理由なんて無い。目的は「他の面白そうなスピーカーを聴いてみたいだけ」だった。
とにかくタニヤマムセン以外に興味を引くオーディオを展示しているお店が目の前に無かった。そして、何より他にオーディオを置いている店を知らなかった。
そのお店のオーディオ展示スペースは入口を入って右側にある。そもそも店舗スペースが広く見積もっても14、5帖。オーディオに割かれたスペースは恐らく広くても5帖といったところだった。
記憶が既に曖昧だがコーナーに入って正面奥にある壁中央にアンプらしきものやプレイヤーらしきものがラックに収まった状態で展示されている。
その左右に出来うる限りスピーカーを設置してあり、オーディオと向合う様に商談用のガラス天板のローテーブルとソファーがあるといった様子だったと思う。
展示されている製品の価格を見てすぐに出ようと思った。何故なら掲示されている価格の桁数が6桁のモノしか見当たらなかったからだ。桁数が6桁なんて危険だ。直ぐさま店を後にしようとすると女性の声がした。「よかったら視聴して行って下さい」。
もしかしたら「聴いて行って下さい」だったかもしれない。そこにあった笑顔にもみえる目は相手の器を計るかの様にも映った。
値札の6桁やら相手の様子に戸惑いつつもオーディオへの興味の方が勝った。口をついた返事は「えっ??良いんですか??」だった。
うろ覚えだが返事をした後すぐに「どんなジャンルを聴きます?」と訊かれたと思う。その時パット・マルティーノの”Exit”を持っていたので、それを出しても良かったのだが「Jazzを聴きます」とだけ答えたかと思う。
結局、日頃聞き慣れている音源が良いだろうという事でお店にあった何枚かのCDの中から自分も所有しているソニー・クラークの”Cool Struttin'”を選んだのを覚えている。
ソファーを薦められ腰を落着けながら視聴していると暫くしてローテーブルにアイスコーヒーが出て来た。買いに来たわけでもないので正直困っていたが「折角だから落着いて聴いて行って下さい」と言う。この御陰でこっちは反って警戒心が強くなった。
自分は単に気が小さいのだ。
つづく
=関連リンク=
初めてiTunesを -私的Macオーディオ化計画その5-
初めてiTunesを -私的Macオーディオ化計画その4-
初めてiTunesを -私的Macオーディオ化計画その3-
初めてiTunesを -私的Macオーディオ化計画その2-
初めてiTunesを -私的Macオーディオ化計画その1-