photo by Apple, Inc.
僕はAppleウォッチャー。Appleと出会ったのは遠い昔のこと。あれから、どのぐらいの時間が経ったのだろうか…
かつてはコンピューター製品といえば「夢のある製品」「未来に思いを馳せる製品」という印象だったが、その後、性能の向上と共に実用的な製品に成長した結果、それは日用品と化していった。
そんな変化と共に僕もすっかり歳をとった。かつては夢中になったAppleも気が付けば、すっかり以前とは違った製品創りを行う企業に変貌していた。その切っ掛けは過去に日本で行われた高齢者向けのテストケースだったのかもしれない。
詳細はすっかり思い出せなくなってしまったが当時Appleが日本の郵便配達と、どこだったかの同業者と一緒に高齢者向けのテストを行ったのだ。その時、色々なことが分かったのだろう。その頃を境にAppleの製品が変わった様な感覚がある。
Appleだけに限らないが、ここ最近誰もが話題にするのは携帯の音声機能だ。一人で生活する高齢者が多くなったのが原因かもしれないが携帯の音声機能が昔とは違って本当に勝手によく喋る。例えばこんな感じで。
僕が気持ちの良いほど晴れ上がった日にラジオを聴きながらダイニングの椅子でボォっと、していると
「今日は良い天気ですね。この4日ほど洗濯をしていないので汚れ物がたまっていると思います。洗濯をしませんか?」と携帯が話しかけて来た。多分、洗濯機の動作履歴を確認して話しかけて来ているのだろう。
「何度も言うけど、この家には僕と猫しかいない。数日では、そこまで汚れ物はたまらないよ。なんだったら君が洗ってくれ」
「なるほど。プライバシー設定で洗濯カゴの汚れ物の量を計測出来ない状態ですので、お訊きするしかありませんでした。あと質問ですが”君が洗ってくれ”というのは”洗濯機への汚れ物の投入を私が行う”という理解で良いのでしょうか?」
細かい質問が来たな、と思いながら「ああ、今のは嫌味で言ったんじゃないんだ。ただ素直に”そうなら楽なのにな”と思っただけなんだ」
「分かりました。今の内容を今後の製品開発に活かすためにAppleに送信して宜しいでしょうか?勿論、送信される内容は個人が特定されない状態で行われます」と携帯は訊いて来た。
この時”ああ...今、これを送信したらAppleなら本当に洗濯機に汚れ物を入れてくれる製品を出して来そうだ...”と思った。しかし、僕は敢えてこう答えた。「ありがとう。けど、これ以上運動不足になるのはマズイと思うんだ。だから、その内容は送らなくて良いよ」
「承知しました。では、運動不足という言葉のついでに散歩か今晩の夕飯の買い物に出かけませんか?今確認したところ今日は野菜の特売日です。まだ、商品も十分に揃っている様子ですよ。あと、家のオイスターソースの残りが少なくなりました。追加の購入を…」
携帯の饒舌さが発揮されている途中でウチの猫が鳴きながら僕に近寄って来た。鳴き声が聞こえた途端、携帯はそれまでの話を切って「今の鳴き声を翻訳しますか?」と訊いて来た。
僕は猫が頭を撫でられて喉をゴロゴロといわせながら気持ちよさげにしている様子を眺めながら「ああ、いいよ。こいつとは長いんだ、様子を見れば何が言いたいのかはだいたい分かるんだ」と答えた。
「そうですか。素敵な関係ですね。ところで先ほどの続きですが…」と話だしたので「十分だよ。ありがとう。どっちにしても買物は必要だから君のお薦め通り買物に出かよう」と遮った。
「素晴らしい。では、一つ大事なことをお伝えしておきます。お出かけの際は私を忘れない様にお願いします。出来れば腕時計も付けて行って頂けると通知や会話が必要な場合に私を取り出さなくても…」
「分かった、分かった。腕時計も付けていくから!」また長くなりそうだったので僕は携帯の話を遮った。
こんな感じで携帯は単身高齢者に対してはやたらと話しかける様になった。どうやら、会話が少なくなるのを危惧して、その様に設定されているらしい。
でも、携帯の様な製品がある一方で正反対の極端な製品もある。好きな人には堪らない製品らしいんだけど、Appleが世に名が知れ渡りだした頃の製品の現代版が発売されていて一部で人気を呼んでいるらしい。
もう、かれこれ60年以上前の製品をよくも復刻する気になったもんだと感心したのを覚えている。基盤だけが売られているApple Iという製品は流石に手が出し辛いんだけどApple IIは僕にとっては丁度良い具合のレトロ感で興味を持っている。
これらの製品は高齢者の間ではペラペラと喋らないのが良いという人も多いとか。でも、若年層でも、この製品に興味を持っている人たちが結構いるらしい。
しかし、何でまたこの頃の製品を復刻したのかというと今、高齢者になっている世代が「この製品が出た頃に思春期を過ごしていた」というのがその理由だというのを、どこかのニュースサイトから携帯が読上げてくれた。
でも、本当の所これらの製品はどうしても手を動かして使うことになるので高齢者の認知症防止に、というのが目的なのかもしれない。Appleも今年で創業70周年だから、一見ジョークとも思える、そういった製品も高齢者向けならばアリなのだろう。
最近、僕も70も半ばになって物忘れが多くなって来た。ここはいっちょ元祖AppleウォッチャーとしてもApple IIの復刻版を楽しみつつ認知症防止とやらをやってみても良いかもしれない。
2046年4月1日
以上、発信元Ora Duriet Tam iKi Nosu Newsデスク
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