2008年04月18日

変わるもの、変わらないもの ― グローバル企業としてのアップル ―

Apple Japanによる同志社大学神学部の講演に行って来た。
山元賢治_01.jpg

(写真はマイコミジャーナルより拝借)


当日のスピーカ−は待望通り山元賢治氏だった。本記事のタイトルは講演のテーマとなっていたもの。実はこの講演は既に一週間以上前(4/9)の事になるが備忘録として記事にしておこうと思う(笑)。

以下の内容を読んで頂く前に理解しておいて頂きたいのだが、当日はメモ用紙などを用意せず講演を聴いていた。その為ここに書かれている内容はわたくしからの視点でもあり正確なものとは違うのであくまで概要として読んで頂きたい。

まず最初に同志社大学神学部教授の小原克博氏により同志社大学がどうしてAppleと縁が出来たのかを説明。そこではこう語られていた。

「先日生徒1000人を相手に講義を行った際、あまりにも授業を受けるには相応しくない騒がしさと態度の無さに苦労をし、真面目に講義を受けようとしている生徒にしっかりと講義が届いたか心配になった。

そこで何とか他の方法で講義を聴講することは出来ないかと模索を始めた。そして、Podcastで生徒達に授業を受けさせたいという想いをA4サイズの用紙にしたためApple Japanに送ったところ思いもしない素晴らしい反応があった」

そして、今日の講演に繋がっているのだ、と小原克博氏が説明されていた。その後山元賢治氏が登場、MacBook Proと二台のプロジェクターを利用して礼拝堂の壁にkeynoteを表示しながらの山元氏にとって初めての礼拝堂での講演が始まった。

講演概要

◎Macについて
■Macが活躍する映画、CM、TV分野の実績を紹介するムービー
トヨタや映画「男たちの大和」はじめ日本の企業も多くムービーの中で紹介される
ハリウッドチックなド派手なムービーが山元氏の手で流される

■1983年に生まれた世の中のイノベーション
マイケル・ジャクソン「スリラー」1億400万枚を販売
東京ディズニーランド開園、全く新しいビジネスモデルのテーマパークの誕生
同じ年Apple Japan誕生と説明

■1984年
Macintosh誕生
新しい価値(イノベーション)を一般に普及させた。
山元氏ご自身が当時IBMに在籍されていたことを話される。

IBMが当時パソコンコンピューターを導入するのに50億という費用が掛かったこと、そして、あまりに発熱量が多くトンでもなく空調設備に神経を使ったこと。そして、そのコンピュータを触れるのは一部のオペレータのみで他の人間は紙に打ち出されたデータしか見ることが出来なかった。しかし、そこに新しい個人のコンピューターが登場した、と言葉を繋がれる。

そして、当時IBMに関わる者として複雑な心境で見ていた印象深いCMについて話された。

IBMを支配者と見なしAppleが囚われる人々を開放する物語が紹介される。ここでMacintoshの記念すべき第18回Super BowlでのデビューCM「1984」を流す

■一気に1999年
それまでベージュに染まっていたパソコンに様々な「色」を提案(イノベーション)した。CM楽曲にThe Rolling Stonesを採用したiMac 5 ColoersのCMが流される

■2007年
iMac(mid 2007)を紹介
モニターと一体になったモデルでは究極の省スペースを実現(イノベーション)
iMac(mid 2007)のCMが流される。

一緒にBoot Camp、VM WareなどのWindows環境を紹介。Macを使いたいけどWindowsが必要なことも多いという心配をしなくても良くなった、と説明。

■2008年
MacBook Air登場
どこも妥協せずに究極の薄さを実現(イノベーション)。

「京都に来るにも重くないし鞄も小さく出来て良い」と山元氏ご自身のMacBook Airを鞄から取出しお披露目。スリープから直ぐに立ち上がり素早く利用出来ることを強調。そして、MacBook Airのパッケージで地球環境に優しい製品作りを実現していることを紹介。

MacBook AirのCMが流される。

2007年にSteve Jobs CEOから全社員に地球に優しい企業になる為に自分に出来ることを実行して欲しい、と頼まれたことを話される。

その返答として現在Apple Japanでは必要無い時は社内の明かりを消したり全社員を夜7時には帰宅する様に命じている、と話されていた。

◎現在の首都圏でのMacのシェアについて
あくまで2007年末と断って話されていた(と言いつつKeynoteの画面は2008年1月から2月末の表示になっていたが...)。現在首都圏では首位の富士通を抜き20%のシェアを確保しているとのこと。

今後の課題は首都圏、京阪名以外の地方での認知の促進が重要だと語られていた。そして、現在若手社員を中心に各都道府県に1人ずつ配しており、じわじわと認知を伸ばしていると説明された。

◎iPodについて
MDが販売されているのは日本と欧米などの一部だけ、その他は携帯型CDプレイヤーを持ち歩いていた。

iPodが登場したことでポケットの中に4GB(5GBの間違い)を持ち歩ける(イノベーション)様になった。

初代iPodのCMが流される

iPodは進化し続けている。
現在はiPod touchが登場。
とうとうWi-Fi環境があればどこでもiTunes Storeで購入出来る様になった。

iPod touchのCMが流される

iPod製造工場登場
台湾のメーカーを紹介。製造現場写真を紹介。

製造機器は一台だけで5,000万円。ここにある台数だけで一体いくら掛かっているかはあまり考えたくない、とのこと。次々に建設され続けているiPod製造工場立地区画の写真を紹介されながら、この建物の中で日々の生活に必要なモノは殆ど手に入る様になっていること、そして、一日に最大10万人が働いていることを紹介。

iPhone
日本の携帯電話製造企業は全くワールドワイドで活躍出来ていないことを説明。日本企業のハードウェア中心で物事を進めて行くことに疑問を提示される。Appleはソフトウェアな発想でイノベーションを起こしていると説明。(もしかするとこの部分は間違っているかもしれない[汗]...)

Super Bowlで登場した3億円のiPhoneのCMが流される

◎教育分野での活動について
同志社大学でのPodcastや下京中学校でのMacを利用したコンテンツ制作に関して言及。

第一回学生デジタル作品コンテストを紹介
下京中学校制作作品「下中怪獣撮影中!?」を紹介。ここで下京中学校の生徒が制作したムービーの一部を再生。わたくし自身中学生とは思えないクオリティーにビビる(汗)...

この他にも他校の女子サッカー部の勧誘ビデオなどを紹介されていた。

◎Apple Japanの求める人材について
現代においてメールが安易に利用されていることに危惧を覚えていると言及されていたのが印象的だった。非常に緊急な内容でさえメールで連絡が来る、何か物事を頼むのにもメールで来る、何でもメールで事が済むとは思わないで欲しい。顔と顔を合わせて初めて通じる話も沢山ある。と山元氏。

Apple Japanの新卒採用枠に対して全国から数千人の応募の中から80人ほど採用していること。そして、その面接は全て山元氏ご自身が行なわれていることを話される。Apple Japanで働くには英語力が必要なことと何より体力が重要と強く語られる。

そして、ご自身の20歳の頃の水着姿の写真をお披露目。あの頃に逆三角形の体格になるほど鍛えておいた御陰で今の自分があると話される。しかし、現在は残念ながら寸胴な体系になってしまったと話されていた。

◎山元氏と神学部教授小原克博氏との対話
小原克博氏から現在の教育機関でのMacの普及状況(つまりWindowsの寡占状態のこと)に関しての質問に対して山元氏。「Appleの社員には安くしてまで売る必要な無い、自分たちの製品が必要とされる場所でしっかりと活躍出来る様にして行けば良い、と話しています」と山元賢治氏。

その一例として医療現場などで本当に正確な色の再現が求められる環境下ではMacに強みがあり、現実に多くの現場で利用されている事を強調。そして、欧米での教育現場での写真を紹介(以前Wired VisionのCut Up Macでも紹介された写真)。

◎聴講者から山元氏に対する質疑応答
●iPhoneの日本での展開に関する質問
山元氏の回答
わたしが一番困るのは新しい製品や展開に関するお話が一切出来ないこと。わたしは話した瞬間にAppleをクビになる。

一つだけ言えるのは今日ここに来られているMacお宝鑑定団会長の書かれていることは何故か良く当たるということ。そして、今のわたしの顔を見て頂いて判断して頂きたい。わたしは今全てが上手く運んでいると思っている、と満面の笑みで答える。

●わたくし(+.k代表)からの質問
わたくしが両親にプレゼントしたiMacが残念ながら全く使われていないこと、その理由として操作の必要最低限であるマウスの操作が理解出来ないということ、そして、その昔存在したマウスの操作方法の説明に関するアプリケーションが現在のMacに付属していないことに関して質問。

山元氏の回答
(ご本人自身何故かいきなり反省の顔色を浮かべながら)わたしたちはユーザの方々がマウスが使えるのは当たり前だと思い込んでいました。その件に関しては是非わたくし共の宿題として持ち帰りたいと思います。いつお答え出来るか分かりませんが宜しいでしょうか?

上記の様に非常に嬉しいご回答を頂けた。Mac OS Xに移行し始めてからマウスの操作方法の説明に関するアプリケーションが付属していないことに以前から違和感があった。わたくしが初めて買い求めたMacはPerforma 550だったのだが当時のバンドルソフトの中にマウスの操作方法に関して懇切丁寧に教えてくれる「マウスの練習」というアプリケーションがあった。

その時、当時10年前にMacintosh 128kに触って以来人生二度目のマウス体験だったわたくしはこれでマウス操作をマスターすることが出来たのだ。現在の若年層は生まれたときからパーソナルコンピュータが目の前にあった御陰でマウス操作を教える必要は無かったかもしれないがわたくしの両親の様な年代層にはマウスの操作方法に関する説明は必須だと思われる。

講演終了後、山元氏ご本人にわたくしの質問をお願いとして、そして、宿題として受け入れて下さったことにお礼が言いたくて握手を求めに行った。

わたくしが「高齢者でも扱える製品を産み出して下さい」とお願いすると「iMacやMacBookにiSightが搭載されているのは高齢者の方でも簡単にコミュニケーションを取って頂きたいのが目的。そして、高齢者の方々にも扱える製品を創って行くのはわたしの目標でもあります。是非やらせて頂きます。」と快く応じて下さった。

最後に自身が名刺を持ち合せていなかったのにも関わらず「お名刺を頂いても宜しいですか(冷汗)??」とお願いしてお名刺を頂いてしまった(大脂汗)。(あの様な失礼な形でもお名刺を下さった山元氏の寛大さにこの場をお借りしてお礼申し上げます。)

とにかく山元氏は良い意味で熱い方だった。正直お話の中には硬く感じる部分もあったのだが、それはご自身の内面で何か拘りがあるのだろう。氏がApple Japanを良い組織にして行こうという想いが本当にあることを感じることが出来た。

良い悪いは別としてApple Japanの人材を大幅に刷新し前進を意図とした組織に変えたと講演の中で話されていた。何より実際に氏と握手をしながらお話しした時のその在り方には氏の優しい人間性が滲み出ていた。失礼ながら書かせて頂くとどちらかと言えば優し過ぎる印象もあったぐらいだ。

山元氏との別れ際、大変丁寧に氏から「本当に素晴らしいご提案を頂き誠にありがとう御座いました」と深々と頭を下げられた。わたくしは氏のその姿勢に大変恐縮すると同時にそのお人柄に安心を覚えた。そして、わたくしも氏の想いに答えようと深々と頭を下げた。

今後のApple Japanがどの様な組織になるのかは分からないが少なくとも氏がおられる間は大丈夫だと感じた。話はいきなり変わるが、この後Macお宝鑑定団の会長にもご挨拶することが出来、お名刺まで頂いてしまった(ビックリ)。(この場をお借りして会長には気さくにお話し頂いた上にお名刺まで頂いたことにお礼を申上げます。)

名刺.jpg

(手前が山元氏、奥がMacお宝鑑定団会長のお名刺)

最後に帰りの道中サポートセンターのコミュニケーション能力についてお話しするのを忘れたことを思い出した(汗&笑)。また、機会があればお話ししてみよう(笑)。

apple_goods.jpg

(今回の講演で頂いたお土産。小さなカードはiTunes Storeで利用出来る”1 free song card”。エコバッグは質問者のみが頂いた。)

apple学割チラシ.jpg

(学割の優待内容に思わず「学生に戻りたい...」と呟いてしまった。しかし、Appleスタッフの方が作成されるチラシはいつもスーパーのチラシレベルだ[汗]...ブランディングを考えるとこのデザインは正直疑問だ。Apple Japan側に広告デザインの雛形は無いのだろうか??何だったらわたくしにデザインを任せなさい[爆]!!)

参考リンク

同志社大学Podcast

つだっくの知財な日々-アップル日本社長山元賢治

当Blog-Apple Japan

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posted by 賀川和之 at 23:51| Comment(4) | TrackBack(2) | Apple | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
非常に良いエントリでした。
とてもラッキーな機会でしたね!

ボクにとって以下の話がとても興味深かったです。
1. iPod製造工場
2. イノベーション (パソコンに様々な「色」を提案等)
3. 現在の首都圏でのMacのシェア20%
4. メールが安易に利用されていることに危惧を覚えていると言及
5. 高齢者でも扱える製品

日本の法人としてのアップルジャパン株式会社はなかなか顔がみえませんから、こういうトップの話を通じてその方向性をかいま見られたこと、本当にうらやましく思います。
Posted by Jack at 2008年04月20日 12:32
毎度ですJackさん(笑)!!

まずはJackさんのブログにクドく書いたコメントに
対して懇切丁寧に返答頂きありがとう御座います。

そして、わたくしのコメントを受取って下さって
本当にありがとう御座います。あの内容を
直ぐさま受取られるとはJackさんは本当に
「勇気」がある方だと思いました(感動)。

さらに記事の内容まで褒めて頂けるとは
光栄です(感動の涙)!!

しかも、興味深かった点を列挙までして
頂けるなんて(シミジミ感動)...

本当にApple Japanは原田さんの時代と違い
顔の見えない企業になっていると感じていました。

しかし、今回は現在のApple Japanの一面を
見ることが出来たと思います。

今後とも日本の風土に根ざした「日本のApple」
として成長されることを心から願っております。

Jackさんともまた是非生でお話しする機会が
あればと思っておりますよ。
今度は是非Jackさんのお話を沢山お聞きしたいです(笑)。
Posted by +.kだいひょう at 2008年04月20日 13:12
マウスの練習っていうソフトがあったのですね。
う〜ん、勉強になります。
エコバック欲しいな〜〜〜
Posted by Sumac at 2008年04月20日 22:42
毎度でオマスっっっっ(笑)!!

>マウスの練習っていうソフトがあったのですね。
う〜ん、勉強になります。

さよで御座います。海底に宝物探しに
行きながらマウス操作が学べるという
素晴らしいソフト御座います(笑)。

>エコバック欲しいな〜〜〜

こりは我が家の家宝で御座います(爆)。
Posted by +.kだいひょう at 2008年04月21日 13:20
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